附現代假名書下文
風(かぜ)緩(ゆる)やかにして雨(あめ)柔柔(じゅうじゅう)
花(はな)落(お)つること何(なん)ぞ悠悠(ゆうゆう)たる
淚(なみだ)春衫(しゅんさん)の袖(そで)に灑(そそ)げり
一曲(いっきょく)にして幾多(いくた)の愁(うれ)いぞ
相思(そうし)遠(とお)くして相思(そうし)長(なが)し
流光(りゅうこう)を奈(いかん)ともすること無(な)し
佳人(かじん)未(いま)だ曾(かつ)て忘(わす)れず
何處(いずこ)にか夢鄕(むきょう)を共(とも)にせんや
當年(とうねん)雙雙(そうそう)として鸞帳(らんちょう)を揭(かか)げて
紅蕤(こうすい)枕畔(ちんぱん)に身(み)を輕(かる)く揚(あ)ぐ
最(もっと)も是(こ)れ胸(むね)漾(ただよ)わんと欲(ほっ)し
臙脂(えんじ)玉肌(ぎょっき)滿堂(まんどう)に香(かんば)し
灧灧(えんえん)たる翠波(すいは)霓裳(げいしょう)を舞(ま)わしむ
艷艷(えんえん)たる花氣(かき)春江(しゅんこう)に蔓(はびこ)る
姍姍(さんさん)たる微步(びほ)模樣(もよう)俏(うるわ)しく
珊珊(さんさん)たる玉影(ぎょくえい)紅妝(こうしょう)に映(は)えたり
梅雨(ばいう)細(ほそ)くして梅雨(ばいう)梭(うが)つ
風(かぜ)淸(きよ)くして氣(き)和(やわ)らぐ
別(わか)るる時(とき)に良辰(りょうしん)破(やぶ)れ
緣(えん)に盡(つ)くるに若(なんじ)を奈何(いかん)せんや
夜夜(やや)にも相思(そうし)を天河(てんが)に寄(よ)すれば
星月(せいげつ)無情(むじょう)にして苦恨(くこん)多(おお)し
最(もっと)も是(こ)れ匆匆(そうそう)として過(す)ぎては
鏡花水月(きょうかすいげつ)煙蘿(えんら)と作(な)す
茫茫(ぼうぼう)たる塵世(じんせい)盡(ことごと)く蹉跎(さだ)
忙忙(ぼうぼう)たる焦心(しょうしん)自(おのずか)ら婆娑(ばさ)
遑遑(こうこう)たる情路(じょうろ)皆(み)な坎坷(かんか)たらんや
惶惶(こうこう)たる一夢(いちむ)にして又(ま)た南柯(なんか)
嗚呼(ああ)雨(あめ)は人(ひと)を把(もっ)て消磨(しょうま)せしめ
嗟夫(ああ)餘生(よせい)幾度(いくたび)か歌(うた)わんや
沈沈(ちんちん)たる夜色(やしょく)留(と)むべからず
陳陳(ちんちん)たる往事(おうじ)頗(すこぶ)る煩憂(はんゆう)す
慢慢(まんまん)たる孤舟(こしゅう)永晝(えいちゅう)に漂(ただよ)い
漫漫(まんまん)たる浮生(ふせい)何處(いずこ)にか求(もと)めん
梅雨戀歌(ばいうれんか)歌(うた)は未(いま)だ休(や)まず
雨(あめ)も亦(また)詞文(しぶん)風流(ふうりゅう)を寫(うつ)す
戀歌(れんか)一首(いっしゅ)君(きみ)の爲(ため)に奏(かな)で
歌(うた)を萬里(ばんり)に吟(ぎん)じて千愁(せんしゅう)を解(と)かん
開頭宋詞名篇 靑玉案·凌波不過橫塘路 第二段
飛雲(ひうん)冉冉(ぜんぜん)たり蘅皋(こうこう)の暮(くれ)
彩筆(さいひつ)もて新(あら)たに題(だい)す斷腸(だんちょう)の句(く)
試問(しもん)す閑情(かんじょう)は都(すべ)て幾許(いくばく)ぞ
一川(いっせん)の煙草(えんそう)、滿城(まんじょう)の風絮(ふうじょ)、梅子(ばいし)黃(き)なる時(とき)の雨(あめ)に。
注 「閑情かんじょう」一作「閑愁かんしゅう」